お茶を淹れる過程は、科学的な実験に似ています

忙しい毎日の中では、日々の小さな楽しみでさえもときに省略されがちです。茶葉からお茶を淹れることも、ペットボトル入りのお茶がすぐ手に入る中では面倒に思えます。しかしこの時間を少しの余裕として捉え直せば、お茶を淹れる過程自体も心の癒しに繋がるかもしれません。
淹れ方で変わるお茶の味
茶葉からお茶を飲む場合、注ぐお湯の温度や茶葉の量、蒸らし時間などバランスよく調整します。
お茶に含まれる成分はそれぞれ溶出のタイミングが異なり、その絶妙な組み合わせがお茶の風味に直接影響を与えるからです。
心や身体の状態に合わせてお茶の飲み方を変えることができます。
充実した毎日を過ごしているとき、
おすすめしたいのは熱いお茶です。
緑茶飲料のカテキン効果で有名なガレート型カテキンは、茶葉から飲む際には熱いお湯を注ぐことで溶け出す成分です。健康に良いとされる多くの効果があり、一般的に「抗酸化作用」が広く知られています。※やけど注意です※
気持ちを落ち着かせたいとき、
おすすめしたいのは水出しのお茶です。
お茶の旨み成分を担うアミノ酸のテアニンは、「ストレス軽減」や「リラックス」など気持ちを穏やかにする作用で知られており、冷たい水でも溶け出しやすい性質があります。
バランス良くお茶を飲みたいときは、
お湯の温度を70℃にするのがおすすめです。
一杯のお茶に含まれる成分は微量でも数多くの成分を一度に摂取でき、それぞれの成分が相互に高めあう効果も期待できます。また水分やビタミン、ミネラルも含まれており、バランスの取れた栄養を摂取することができます。
お客様にお出しするときも、喜んで頂ける味わいです。
おいしいお茶は再現できます
ほとんどの茶葉の袋には、お茶の淹れ方について分量や時間の目安が記載されています。
しかし茶葉から淹れることに慣れていないと、その根拠やおいしさの基準がわからず、記載の目安だけで淹れるのは少し難しく感じます。

そこで科学的に測定された資料から、時間や温度と成分の溶出量についてそのバランスを比較し実際に試してみました。左は、該当部分のみを取り出しグラフ化したものです。
茶葉4gに対し120mlのぬるま湯(60℃と70℃)で、1分浸出し抽出されています。
(参考文献:煎茶の1煎・2煎・3煎液の成分組成に基づく溶出特性/茶業研究報告)
EGC(エピガロカテキン)は穏やかな渋みで低温でも溶け出しますが、EGCG(エピガロカテキンガレート)は渋み強めで高温で溶け出します。
テアニンとカフェインの場合、60℃と70℃での差はほとんどありませんが、カテキンはどちらも増加します。これは実際に飲んでみるとわかるのですが、70℃のお茶は旨みより爽やかでさっぱりとした味わいです。
60℃のお茶はさっぱりとした味わいながらもかすかな旨みがありました。渋みのカテキンが1/2程度に減少するため、旨みを感じやすいのだと思われます。
ちなみに上記のグラフにはありませんが、カフェインは90℃で急に増加します(約62%)。
水出しのお茶は旨みが多い
農林水産省のお茶のページには水出しの場合の、上記4つ成分の溶出率を比較したグラフがあります。
そのグラフによると、①水出し浸出10分の時点で、テアニンは約50%の溶出率がありますが他の3つは約5%~20%です。②15分になるとテアニンは約80%、他の成分は約10%~30%程度で、温かいお湯60℃の溶出率と同じぐらいでした。
とはいえ全体のお茶の成分からみると、それぞれの割合は実はわずかしかありません。煎茶の場合、アミノ酸(テアニン含む)2~3%・カテキン類9~10%、カフェイン2.5~3.5%でも、それぞれがお茶の味に影響を与えています。
水出しのお茶で旨みを味わい、ぬるま湯で浸出時間を長めにとり苦渋味を知ることで、おいしいお茶の基準がわかるようになります。おいしいお茶は、お客様にも喜んで頂けます。